【映画】イニシェリン島の精霊

配信元:第35回東京国際映画祭

こんにちは、認知症パパ他を介護中のユウコ姉です。

介護に手抜き、ココロにスキマ、ひとりこっそりプチ贅沢。

ユウコ姉
ユウコ姉

これが私の今年のテーマ(笑)

 

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【イニシェリン島の精霊】について

賞レースに乗っかっている噂を聞いただけで、内容も知らずに見に行きました。

“精霊”に癒されるファンタジーかと思ったら、これがとんだ勘違い(笑)。

孤島の住人たちが、罵り合い、不毛な諍いを続けるお話でした。

それなのに目が離せないのが不思議

理由のひとつは、荒涼とした絶景の美しさかもしれません。

そして何とか希望につながってほしいと思いながら、最後まで見たからでしょうね。

そんな甘っちょろい憶測は吹っ飛んでしまいますが

良くも悪くも、強烈な映画でした。

 

概要&受賞歴

『イニシェリン島の精霊』 The Banshees of Inisherin

  • 製作年/2022年
  • 製作国/イギリス
  • 言語/英語
  • 上映時間/114分
  • 配給/ディズニー

受賞歴

  • 第80回ゴールデングローブ賞/最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀脚本賞受賞
  • 第79回ベネチア国際映画祭/最優秀男優賞、最優秀脚本賞受賞

 

上映前のアナウンスで『ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門で受賞』と言っていたのですが、コレ、コメディなのかなぁ?

確かに、パードリックたちのマヌケさにクスリとする場面はありますけどね。

英国人好みのブラックユーモアの一種ってことでしょうか。

そして今年度の米アカデミー賞では6部門にノミネートされながら、なんと無冠に終わってしまいました。

う~ん、残念。

 

スタッフ&キャスト

【スタッフ】

  • 監督・脚本/マーティン・マクドナー
  • 撮影/ベン・デイヴィス

【キャスト】

  • コリン・ファレル(パードリック)…妹と二人で貧しく暮らす中年男。善人だが取柄はない
  • ブレンダン・グリーソン(コルム)…親友だったパードリックと絶縁し、突然作曲を始める
  • ケリー・コンドン(シボーン)…パードリックの妹。読書だけが生きがいの孤独な女性
  • バリー・コーガン(ドミニク)…父親に虐待され続け、いつもパードリックを頼る青年

 

あらすじ

アイルランド内戦中の1923年、小さな孤島イニシェリンでは平凡な毎日が続いていました。

家畜の世話をする他は、パブで過ごすのが日課のパードリックは、ある日突然、長年の親友であるコルムに絶交されてしまいます。

最初は悪い冗談だと思い、仲直りしようするパードリックに、コルムは「これ以上自分に話しかけたら、指を切り落とす」と脅して頑なに拒絶。本当に自分の指を切り落とし、パードリックの家の扉に投げつけてしまうのでした。

何も成し遂げていない半生を悔いて突然作曲に没頭するコルムと、彼を取り戻したいパードリック。

二人の騒動に巻き込まれ、周囲の人たちも徐々に変化していきます。

 

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【イニシェリン島の精霊】総評 ★★★★☆

まったく、やりきれないお話です。

突然わけもなく親友に嫌われる憐れな男パードリックと、自分の才能を開花させようと躍起になるコルム。

仲違いする理由も、解決策も、ハッピーなエンディングもなく、痛々しいやり取りだけが続く映画で、見ていて「え、マジ?このまま終わるの?」と不完全燃焼感を抱えたまま映画館を後にしました。

 

・・・が、見終わった後、ボディブローのように利いてくる。

映画のいろんなシーンを思い返して、すごく考えさせられました。

 

二人の不毛な諍いは、島の対岸で繰り広げられる内戦と同じこと。

小さな島で、同じ顔触れで、同じ日々を繰り返していれば、変化を求めて衝突しても当然です。

それに誰の言い分も、善悪だけでは片付けられない側面がある。

 

映画の途中で「見に来て失敗だったかも」と思い

見終わった後「なんだかなぁ」と感じ

それから「ん?待てよ」と再考しました。

 

5つ星の採点評価は ★★★★☆

時間の経過とともに、私の中でどんどん評価が上昇した次第です(笑)。

 

他の方のレビューを見ていないので、このような感想は私だけかもしれませんが、結果的に「すごい映画だった」という結論に至りました。

本当に考えさせられるんです

鬼才と称されるマクドナー作品は、これが初鑑賞ですが、今後の活躍に注目ですね。

【バンシー=精霊】とは、アイルランドやスコットランドに伝わる「人の死を予告する妖精」で、マクドナー監督はそれをモチーフに映画を製作。映画に出てくる気味の悪い老女はバンシーの化身と思われます。

配信元:yahoo!Japan

名セリフ&名場面(ネタバレ注意)

物語のイニシェリン島は戦火にさらされていませんが、海岸に出れば、本土の爆撃音が響き渡ります。

そんな暮らしをしていれば、人間の内面に変化がもたらされるのも当然かもしれません。

海辺の家に住むコルムがぽつりと言うセリフ。

『何のための戦争か、もうわからんがな』

「やられたから、やり返す」を続けているうちに、なぜ、何のために戦っているのかもわからなくなってくるのでしょう。

100年たっても、世の中変わっていませんね。

 

そんなコルムは、今までの意味のない生活に終止符を打ち「後世に名を残そう」と決意します。

そのために、親友パードリックが邪魔になったのでした。

 

コルムは「くだらないバカ話に、これ以上つき合っていられない」と言うし、他のみんなも「パードリックは、いいヤツだけど退屈で何も考えていない」と散々な言いようです。

パードリックにとっては“いい人”であることが最重要課題なのですが。

 

『俺は“いい人”でいたいだけなんだ!』

そう言いながら、切羽詰まって、自分の良心を捨ててしまうパードリック。

同時に、何も考えない彼が、いろいろ考え始めます。

 

そして、

自分が原因でパードリックの愛するロバのジェニーが死んだことを知ったコルムがとうとう

『これでおあいこだ。チャラにしよう』と手を出し握手を求めます。が、

『ジェニーは死んだが、指をなくしてもお前はまだ生きている。手打ちはしない』

と拒絶し、コルムの家に火をつけることを予告します。

 

映画のラスト、コルムの家が燃え盛るシーンは圧巻です。

パードリックの行為は重大犯罪だけれど、彼らの再生を暗示しているようにも思えました。

 

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