こんにちは、認知症パパを介護中のユウコ姉です。
介護は確かに大変だけど、ココロにスキマを作ってあげて、上手にストレス解消しましょうね!

見に行って正解、とても良い映画でした
【モロッコ、彼女たちの朝】について
何気ない街角のパン屋さんの数日を描いただけなんだけど、なんとも心地いい余韻の残る作品でした。

何気ない…と言っても、モロッコ旧市街ですけどね(笑)
物語の舞台は、カサブランカ旧市街。
登場人物は、最小限。
- どこからともなく現れた妊婦サミア
- シングルマザーのアブラ
- アブラのひとり娘ワルダ
- アブラにぞっこんの粉屋の息子
たったこれだけの要素で、ちゃんと完結しているのがすごい(もちろん名もなき群衆は出てきますが)。
なぜ妊婦が未婚なのか最後まで分からずじまいだけど、イスラム世界では理由などどうでもよくて、とにかく未婚の母はタブーなワケで、過去を探るより、今とこれからをどう生きるかが鍵なのです。
優しい眼差しにあふれているけど、現実的で甘すぎない。
自分らしく生きていくつもりだけど、共同体には逆らえない。
そんな葛藤の中、主人公のふたりの女性が潔くて、私は好感が持てました。
概要&受賞歴
『モロッコ、彼女たちの朝』 ADAM
- 製作年/2019年
- 製作国/モロッコ、フランス、ベルギー
- 配給/ロングライド
- 上映時間/101分
- 言語/アラビア語
受賞歴
- 第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品
- 第92回アカデミー賞女性監督初モロッコ代表
- 第55回シカゴ国際映画祭新人監督部門ロジャー・エパード賞受賞
- 第31回パーム・スプリング国際映画祭審査員賞受賞、他
スタッフ&キャスト
【スタッフ】
- 監督・脚本/マリヤム・トゥザニー
- 製作・共同脚本/ナビール・アユーシュ
【キャスト】
- ルブナ・アザバル(アブラ)…夫を亡くし、パン屋を営みながらひとり娘を育てている女性
- ニスリン・エラディ(サミア)…アブラの家に居候することになる出産間近の未婚の母
監督と共同脚本の二人は夫婦で、実際に世話をした未婚の妊婦さんとの思い出がベースになっているそうです。だからこそのリアリティなのかもしれません。
あらすじ
大きなお腹を抱えたサミアは、職と寝床を求めてカサブランカのメディナ(旧市街)をさまよいますが、未婚の母に手厳しいイスラム社会では、どこに行っても門前払い。
けれど路上で眠る彼女を見るに見かねて、パン屋を営むアブラが自分の家に招き入れます。
最初はサミアを警戒し、すぐに追い出すつもりだったものの、彼女のおかげで店は繁盛し、娘がなつき、夫を亡くして殻に閉じこもっていたアブラの心も徐々にほぐれて、二人の間には姉妹のような情が芽生え始めました。
子供の将来のために生まれたら養子に出すと主張するサミアと、考え直せと諭すアブラ。
やがて、サミアが出産の時を迎え・・・。
【モロッコ、彼女たちの朝】総評 ★★★★☆
いつも思うんだけど・・・このベタはタイトルはどうにかならないのだろうか?(笑)
わかりやすいっちゃあ、わかりやすい。
でもこんな邦題では、人の記憶に残りません。

な~んかカッコ悪いよね
原題は『ADAM』。
サミアが名付けた息子の名前です。
モロッコに限らず、イスラム教徒の長男は“モハメッド”が定番ですが、父親のいない子供につけるわけにもいかず“アダム”とつけたのかもしれません。
タイトルへのクレームはさておき、とても素敵な映画でした。
派手なシーンはひとつもないのに、最初から最後まで釘づけになる珍しい作品です。
彼女たちの翌朝が気になる…(ネタバレ注意)
さて、邦題の『彼女たちの朝』は、ラストシーンに集約されているのでしょう。
出産を終えても我が子の顔を見ようともしなかったサミアですが、お腹をすかせて泣き叫ぶ息子を放っておくわけにもいかず、抱きしめ、お乳をあげて、子守歌を唄い、アダムと名前もつけました。
そして祝祭明けの朝、彼女はアダムを連れて、そっとアブラの家を出て行くのです。
映画はそこで終わりますが、私としては、そのまた次の朝が気になります。
- サミアは息子を孤児院に入れたのか?
- それとも自分で育てるのか?
- アブラはサミアたちを探し回るか?
普通この手の映画では、子供を手放すことを考え直し、アブラの好意に甘えて、パン屋で息子を育てる・・・なんて方向に向かいそうだけど、そうじゃないのがいいところです。

そんな甘っちょろい考え方じゃ、共倒れですよ
彼女はきっと初心を貫き、孤児院に息子を預けて、心に痛みを抱えたまま故郷に戻り、家族が勧める相手と結婚することでしょう。
アブラ母娘も、サミアの不在を最初は悲しむけれど、そのうち粉屋の息子と再婚して、新しい生活を始めるんだろうなと思いました。
それぞれの心のままに、人生の一歩を踏み出す・・・異国の香りとともに心に残る作品です。
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