『少女は夜明けに夢をみる』イラン【映画】

こんにちは、認知症パパを介護中のユウコ姉です。

介護は確かに大変だけど、ココロにスキマを作ってあげて、上手にストレス解消しましょうね!

 

ユウコ姉
ユウコ姉

痛かった・・・彼女たちは笑顔だったのに

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【少女は夜明けに夢をみる】について

映像そのものは、ちっとも痛ましくないんです。

なのに、登場する少女たちが笑えば笑うほど、笑顔の裏に隠された痛みが心に突き刺さる・・・そんな厳しい映画でした。

この作品は、イランの10代の少女たちを収容する更生施設のドキュメンタリー。

施設の中だけにカメラを向けているのに、彼女たちの表情と会話を通して、イランという国を覗き見ている気持ちになりました。

概要&受賞歴

『少女は夜明けに夢をみる』 Starless Dreams

  • 製作年/2016年
  • 製作国/イラン
  • 配給/ノンデライコ
  • 上映時間/76分

受賞歴

  • 第66回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門アムネスティ国際映画賞
  • 第4回ブダペスト国際ドキュメンタリー映画祭ベストフィルム賞・・・他多数受賞

スタッフ&キャスト

【スタッフ】

  • 監督/メヘルダード・オスコウイ
  • 撮影/モハメド・ハダディ
  • 音楽/アフシン・アジジ

【キャスト】

  • ハーテレ…叔父の性的虐待が原因で家出し、浮浪罪で収容
  • シャガイエ…強盗、売春、薬物使用で収容、自分を「名無し」と名乗る
  • ソマイエ…母、姉と共謀して父親を殺害

登場人物は実名ですが、あだ名で通す少女も。インタビューするオスコウイ監督は、撮影後に自宅でシャワーを浴びながら涙を流したそうです。

あらすじ

撮影許可を得るのに、実に7年。高い塀に囲まれた更生施設には、さまざまな罪状で収監された少女たちが暮らしています。

はしゃぎながら雪合戦をしたり、みんなで歌をうたったり、掃除や洗濯さえも仲間と笑顔でこなす彼女たちですが、一人になりマイクを向けられると、その表情は徐々にくもり、やがて涙を流し始めるのでした。

義父や叔父にレイプされた娘、父親に売春を強要されてきた娘、家族に見放され泥棒を繰り返す娘、虐待に耐えかねて母や姉と共謀して父親を殺害した娘。

彼女たちは無罪放免になるより、施設内にいる方が幸せだと感じているのかもしれません。

 

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【少女は夜明けに夢をみる】総評 ★★★★☆

強盗、殺人、売春、薬物・・・これが少女たちの罪状ですが、その笑顔はあどけなさを残しています。

世界はまだまだ女性蔑視の傾向が強いけれど、宗教的にも閉鎖的なイランでは、男女間で罪の大きさも異なるらしく、彼女たちはみな親族に虐待され、生きる希望を失ったまま罪人として生きてきたんですよね。

それなのに、クスリ欲しさに父親から売春を強要されていた娘が言うんです。

「お父さんは本当は悪い人じゃない。仕事をくれない社会が悪い」のだと。

イランは長く米国の制裁を受け、今も緊迫した状況がつづいていて経済は低迷したまま・・・なるほど、彼女らの過酷な人生は、世の中全体が招いた罪なのかもしれません。

少女たちの犯罪やその家族の仕打ちを裁くのではなく、そんな実情を考えさせられる映画でした。

5つ星の採点評価は ★★★★☆

また見たいとは言いませんが、目が離せない作品です。報道だけではわからない中東の現実を垣間見ることができると思います。

少女たちの本音が胸に刺さった

監督に「君の罪状は?」と聞かれ、

『生まれてきたこと』と答える少女。

「子供は欲しい?」とたずねられ、

『泥棒の子は泥棒になるから』いらないと言う少女。

10代の女の子が吐くセリフじゃありません。

けれど映画後半『私の夢は死ぬこと』と言っていた少女が、家族と和解し出所する時こう言うのです。

『これからの夢は・・・生きること』

 

夢がただ“生きること”なんて悲しすぎるけど、家族と抱き合って一筋の希望を見いだせたのでしょうか。

子供を虐げた両親が本当に、この先いつくしみ教育を受けさせるのだろうかと、不安な気持ちでスクリーンを見つめたのは私だけではなかったと思います。

 

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