サフォン『風の影』他シリーズ3作【読書】

こんにちは、認知症パパを介護中のユウコ姉です。

ステイホーム中、読書量が増えた方も多いのでは?

さて、カルロス・ルイス・サフォンという素敵な作家をご存じですか?

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【カルロス・ルイス・サフォン】のすすめ

スペインの作家カルロス・ルイス・サフォンの小説を初めて読んだのは、十数年前のコト。

図書館で、何気なく手に取ったのが始まりでした。

ホントに何の先入観もなく、作家の名前も知らず、『風の影』というタイトルに惹かれただけですが、そんな偶然の出会いが大正解!だった時は、言いようもない喜びを感じるものですよね。

当時、我を忘れて読みました!

実は私が知らなかっただけで、この作品は世界的な大ベストセラー。

ミステリアスで、ロマンティックで、少しサイコで、情感に酔いしれる素晴らしい小説です。

ディケンズやユゴー、シェイクスピアなど文豪へのオマージュが散りばめられいて、小説好きにはたまりません。

舞台となるバルセロナの魅力も満載で、読んでいるうちに、バルセロナの街角に紛れ込んでいる錯覚に陥ります。

最近ふと『風の影』を思い出し、シリーズ3作をまとめ買いして読み返したんだけど、やはり感動し、どっぷりとその不思議な世界観に浸ることができました。*^^*

【カルロス・ルイス・サフォン】について

カルロス・ルイス・サフォン氏は、残念なことに、2020年55歳の若さで亡くなりました。

彼の小説が、これ以上読めないと知った時にはショックでした。

数少ない、けれど濃密な作品を、私は今後何度も読み返すことでしょう。

 

カルロス・ルイス・サフォン <Profile>

  • 1964年スペイン・バルセロナ生まれ
  • 大学卒業後、広告業界で働いた後、執筆活動を開始
  • 1993年『El principe de la niebla』で児童文学賞である第1回エデベ賞受賞
  • 2001年『風の影』を発表。フェルナンド・ララ小説準賞、リブレテール賞などを受賞し、世界中で翻訳される大ベストセラーに
  • 2020年、大腸癌でカリフォルニアで死去
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【忘れられた本の墓場】シリーズ

冒頭で挙げた『風の影』は、【忘れられた本の墓場】を軸としたシリーズの第1作目です。

【忘れられた本の墓場】・・・なんて郷愁に満ちた甘い響きでしょう。

そこは、本に魂を捧げる、限られた人だけが訪れることを許される秘密の場所。

『風の影』では、古書店を営む父親が5歳の息子ダニエルを案内し、そこで彼は運命に導かれるように1冊の本を手に取ります。

フリアン・カラックス著『風の影』

そこから、ダニエルの本をめぐる大冒険が始まるのです。

シリーズどの作品にも、この【忘れられた本の墓場】とダニエル親子の古書店と、彼らを取り巻く仲間が登場します。

物語が完結するたびに、からまった糸が少しずつほどけていくような快感があり、また最初に戻って読み返したくなるかもしれません。

シリーズは4作で完結する予定で、作者はこう言っています。

4つの扉があって、それぞれの入り口から中に入ると、共通の宇宙が広がっている

邦訳されているのは、現在3作。

早く完結編を読みたいのは、私だけではないはずです。

シリーズ1作目『風の影』

この物語の舞台は、1945年のバルセロナ。

ダニエルの父親センペーレ氏は、初めて【忘れられた本の墓場】に足を踏み入れた息子にこう語ります。

「ここは神秘の場所なんだよ、ダニエル、聖域なんだ。おまえが見ている本の一冊一冊、一巻一巻に魂が宿っている。本を書いた人間の魂と、その本を読んで、その本と人生をともにしたり、それを夢みた人たちの魂だ。一冊の本が人の手から手にわたるたびに、そして誰かがページに目を走らせるたびに、その本の精神は育まれて、強くなっていくんだよ。何十年もまえに、おまえのおじいさんに、はじめてつれてきてもらったとき、この場所はもう古びていた。たぶん、このバルセロナとおなじくらいに歴史のある場所だ。いつからここにあるのか、誰がつくったのか、ほんとうに知っている人は誰もいない。おじいさんからきいたことを、おまえにも教えてやろう。どこかの図書館が閉鎖されたり、どこかの本屋が店じまいしたり、一冊の本が世間から忘れられてしまうと、わたしたちみたいにこの場所を知っている人間、つまりここを守る人間には、その本が確実にここに来るとわかるんだ。もう誰の記憶にもない本、時の流れとともに失われた本が、この場所では永遠に生きている。それで、いつの日か新しい読者の手に、新たな精神に行きつくのを待っているんだよ」

そして「1冊だけ好きな本を選んでいい」と言われて、持ち帰ったのが『風の影』

この小説に心を奪われたダニエルは、謎の作家フリアン・カラックスの正体を探ろうと躍起になります。

それは内戦時代のバルセロナの傷跡をたどる旅であり、次第にカラックスとダニエル自身の人生がオーバーラップしていきます。

カラックスの真実に近づけば近づくほど、ダニエルの身に危険が迫り始めるのでした。

シリーズ2作目『天使のゲーム』

『風の影』続編は少し時代をさかのぼり、1917年のバルセロナから始まります。

主人公は作家志望のダビッド17歳、幼少から父親に虐待されてきた彼がくつろげる唯一の場所が「センペーレと息子書店」でした(ダニエルの父親がまだ子供で、おじいさんが店主です)

やがて小説家になったダビッドは、ある日謎の編集者から高額だけれど怪しげなオファーを受けることに。

センペーレ氏と【忘れられた本の墓場】を訪れた直後、執筆を始めますが、彼の周囲で不可解な事件が起こり始めるのでした。


2作目は前作より悲劇的。

でも、この物語がシリーズ1作目と3作目をつなぐ要となります。

シリーズ3作目『天国の囚人』

第3作目は、大人になって父親と書店で働くダニエルが、親友フェルミンのために奔走するお話です。

けれど、それが自分たち親子の過去を明らかにすることに。

このフェルミンという道化のような人物が実にゆかいで、時に哲学的なのですが、第1作『風の影』で偶然出会ったのかと思いきや、とっても深い因縁があったようです。

フェルミンの昔話で登場するのが、2作目の主人公ダビッドで、一連の物語がつながりを見せてきます。

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【カルロス・ルイス・サフォン】今日のまとめ

私は置いてけぼりでしたが(笑)当時「サフォン・マニア」という言葉があったほど、彼の小説に夢中の読者がいたらしい。

とにかく文体が美しい(翻訳者の力でもあるのでしょうが)、謎かけがある、切ない恋愛模様と固い友情がある・・・と、先を読まずにいられない要素がたくさん詰まった作品です。

でも時々タイトルが野暮ったいかな(笑)

私は一度だけバルセロナに行ったことがあるけれど、小説を読んでいると、自分が歩いた裏通りの情景が浮かんできました。

裏通りのバルでサングリアを飲みながら、毎夜サッカー観戦をしてたので

あのあたりに「センペーレと息子書店」があったかも、とふと思ったりしたものです(笑)。

そんなふうに、バルセロナの街が鮮明によみがえるのが、サフォンの作品。

シリーズ完結となる4作目は、スペインではすでに発売されていますが、まだ邦訳は刊行されていません。

タイトルは “El Labelinto de los Espíritus”

日本語では『魂の迷宮』ではないか、ということです。

ああ、早く読みたいっ!

いったい、いつになったら読めるのか!?

シリーズ訳者の木村裕美さんに懇願したい気分です(笑)。

 

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