『国宝』吉田修一著【読書】

こんにちは、認知症パパを介護中のユウコ姉です。

今月は、落語と演劇の舞台を楽しみにしてたのに延期&中止で、とても悲しい。(;_;)

ユウコ姉
ユウコ姉

家族が嫌がるので映画にも行けず、せめて読書を楽しみますか

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【国宝】について

昨年世間で騒がれた当時「歌舞伎界の物語」であるコトだけをインプットして、詳しい内容は知らずに読み始めました。

だから芸を極める厳しいお稽古中心なのかと思っていたら・・・ヤクザの闘争から話が始まり「あれれ?」って感じ(笑)。

ヤクザの親分の息子が故郷を飛び出し、苦労を重ねながら、匂いたつような女形として超一流の役者になるまでを描いたエンターテインメント作品です。

作家の吉田修一さんについて

映画『悪人』の原作者ということで好感はあったのですが、初めて読む作家さんでした。有名なネコ好きらしく、ベンガルとスコティッシュフォールドを飼っているそうですよ。*^^*

 

吉田修一 Shuichi Yoshida <Profile>

  • 1968年長崎市生まれ、法政大学経営学部卒
  • 1997年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、作家デビュー
  • 2002年『パレード』で山本周五郎賞、『パークライフ』で芥川龍之介賞を受賞
  • 2019年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞
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【国宝】内容

時は高度成長期の1960年代、長崎の料亭で開かれた暴力団の華やかな新年会が突然、斬った張ったの大乱闘。

この事件で極道の父親を亡くした喜久雄は大阪に預けられ、歌舞伎役者・花井半次郎の元で役者めざして奮闘します。

半次郎のひとり息子・俊介と切磋琢磨し、二人は華々しくデビューしますが、俊介が逃亡、半次郎は病に倒れ、自身はスキャンダルにまみれながらも、すべてを芸の肥やしにした先に、喜久雄は歌舞伎の新しい世界を見つけるのでした。

【国宝】読書中の心情

これは少し異質な小説でした(もちろん、いい意味で)。

作品を通して「~なのでございます」みたいな語り口で綴られているんだけど、それが妙に心地いい。

NHKの文芸物のナレーションみたいです。美輪明宏とか似合いそう(笑)

冒頭、ヤクザ同士のいざこざがあり、主人公・喜久雄の父親は自分の子分に裏切られて死亡します。喜久雄はそれを知らずに、その男を叔父のように慕い世話になるのですが、子供なりに親の復讐を誓うんですよね。

 

やられたらやり返すなんて、現実ではとても受け入れられないのに、喜久雄が誰にも内緒で親の仇を取ろうと刃傷沙汰に及ぶエピソードは、読んでいて心躍ってしまいます。

ユウコ姉
ユウコ姉

「あ~私ってやっぱり日本人」みたいな感情があふれ出してしまいました

ヤクザの裏社会と歌舞伎界、両極端なようだけど、当時の興行を支えていたのは暴力団だし、どちらも義理人情にあふれている・・・こうして読者はこの小説にどっぷりハマっていくのでしょう(笑)。

 

東京オリンピックや大阪万博、時々登場する実在の有名人が、喜久雄たちと交差して、この物語が虚構なのか真実なのか、わからなくなってしまうのも面白いところです。

俊介が失踪したため、喜久雄は師匠・半次郎の名前を継承しますが、世間が求めるのはやはり“正当な血筋”。そして自分は今でも、背中に彫り物を背負った極道のせがれであることを思い知らされます。

スター役者になった後、後ろ盾を失って長い間冷や飯を食わされ、それでも役者であり続けた喜久雄は、芸を極めるためなら何事も厭わない人間に変わっていきます。

彼が求めた真の舞台は、この世では決して見られない、見てはならない世界に相違なく、そこに到達した時、彼の人生も幕を下ろすことになるのでした。

 

今まで歌舞伎に縁がありませんでしたが、読み終わって「歌舞伎を見たい!」と思ったのは、私だけではないはずです。

【国宝】名脇役

主人公である喜久雄はもちろん、彼を育てる花井半次郎も、その息子・俊介もとても良いキャラですが、きっと一番人気は徳次じゃないかと思います。

徳次は孤児で、喜久雄の家の居候です。小さい頃から一緒にヤンチャをし、深い絆で結ばれている義兄弟のような存在。

単純バカな男ですが、喜久雄を追って大阪に行き、どんな時も喜久雄を励まし、喜久雄のためなら何でもしてやる義理人情に厚い人間です。

彼がいなかったら、喜久雄の人生はどんなに悲惨だったかと思うほど

そして喜久雄の義母マツ・・・この人がまたいいんですよねぇ。

なさぬ仲の喜久雄のためだけに生きてきたと言ってもいいくらい、喜久雄に愛情を捧げています。

この二人が登場するくだりは、きっと涙を誘いますよ。*^^*

【国宝】の裏話

この小説では、歌舞伎の演目から興行の裏話まで、とても詳細に語られるのですが、そのリアリティは作者の経験に基づいているそうです。

吉田修一さんは、四代目・中村鴈治郎の黒衣をしていたんですって。

それを知った時、私は「なるほど~」と唸りました。

演劇界の裏も表も知り尽くしているからこそ、こんな素晴らしい作品が誕生したんですねっ!

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【国宝】今日のまとめ

『国宝』上下巻、本当に面白かったです!!

現在、世の中はコロナウイルス騒ぎで外出もままならない状況ですが、こんな時には本を手に取ってみるのもいいかもしれません。

今回の私のようにツボにはまる作品に出会えれば、読書の世界がまた広がりますよ。*^^*

エンターテインメント性の高さを存分に楽しめたので、ちょっとこの路線が続くかも・・・恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を読み直してみようかなぁと思っています。

 

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